さけ夫婦、日本酒の学校に通う。vol.1

さけ夫婦、日本酒の学校に通う。vol.1 教育

~インフィニット上級① 20220710~

日本酒を科学的に学ぶ!?そんな学校があるなんて。
日本酒を飲むのが好き。
だから、
日本酒のことをちょっと本格的に学んでみたいな!
でも、

  • 利酒師とか資格を取るには10万円以上するし
  • 独学しようにもどこから手を付けたらいいものか・・・

そんなあなたへ、ゆーるく学べる日本酒学習ブログです。
今回の内容は、さけ夫婦が通っている日本酒学校
「インフィニット酒スクール」


上級コース第1回目の学習シェア!!
蔵人経験者のサニー(夫)とポン酒女子エミー(妻)の成長日記です。
1年間の中級コースを終えた我々にいったいどんな「おもしろ」が待っているのでしょうか?
※この記事は日本酒中級者向けの内容になっています♪

日本酒造りの話

「日本酒の7割は醸造技術」

先生は口癖のようにこう言います。

だから、
ただ「甘い」「辛い」「リンゴの香りがする」「まるでパイナップル」
といった表現で済ませるのではなくて、冷静に情報を整理して、
造りのプロセスを理解することが重要なんです。

特に麹、酵母、造りといった部分を1つ1つ理解していきましょう!

日本酒のすべての基礎。

「日本酒度」や「アミノ酸度」に影響します。

直接的な味わい成分でもあるのですが、
「酵母との関わり」
において麹が本当に重要。縁の下の力持ち。

「一麹二酛三造」
という言葉でも表現されるように、麹は日本酒造りの土台になります。ここが疎かだと絶対に良い酒は出来ません。

酵母の選択

酵母って「発酵の母」という言葉通り、めちゃめちゃ凄いやつ。

そして、
種類は無数に存在し、日々新たな酵母が発見、開発されている。

酵母は種類ごとに遺伝子が違うから、生成する成分の種類とか量が違います。

酸の中でも、クエン酸を多く生成する酵母もあればリンゴ酸を多く生成できる酵母もあります。

吟醸酒というと酢酸イソアミルとかカプロン酸エチルが香り成分として有名ですが、
酢酸イソアミルはすべての清酒酵母に生成遺伝子があります。

しかし、
カプロン酸エチルについては、
そもそも酵母が生成できる遺伝子を持っていないと生成できません。

頑張れば報われる、という話では片付かないこともあるんですね。

もしカプロン酸エチルをどばどば出したいなら、
大量のグルコースが必要になるので、
高い値でグルコースを生成する麹を育てないといけません。

設計とは?

日本酒は日本の歴史的かつ文化的な存在です。

そして、江戸時代には日本酒造りに失敗すると杜氏さんは切腹させられていたようです。

冷蔵技術もなく、衛生面も良くない、
そんな中で日本酒を造るのは杜氏をはじめ職人さんにとって命がけの難しいものでした。
それは杜氏さんの経験から来る勘頼みの世界。

でも、今は科学的にすべて整えていくことができます。

乱暴な言い方をすると、基礎を知っていれば、日本酒は誰でも作ることができます。
昔は10年~20年修業してようやく半人前、という感じだったらしいですが、今は20代の若者もどんどん美味しいお酒を生み出しています。(加茂錦とか)

それって、科学的に日本酒造りのメカニズムが解明されてきたからであり、設計図があるから。
だから、勘とか運に影響されにくいようになってきています。

それだけ言うと誤解を生みそうなので補足しますが、経験や勘も必要です。
それは「イレギュラー対応」のとき。
そうした時の対応の差が1流かどうかの境目ということなのでしょう。

「仙〇さんとか、まだまだ良い時と悪い時の差がデカすぎるんだよなぁ、今年のさ〇らとか全然美味しくなかったし。」

なんてことを先生が言っていましたね(消費者として僕らも同感でした)。

市場側からみた日本酒

生産者側(酒蔵サイド)って消費者目線になりにくいよね、っていう話。

ファンはイベントなどで酒蔵の人と交流しても
「美味しいです」「美味しいです」
ってしか言われないから、なかなか消費者と目線が合わないよね。と先生。

ちょっと深いい”常山”の話

そんな中で、福井の名門”常山”は素晴らしかったらしいです。

凄い謙虚な姿勢で消費者とか、研究所とか、専門家の助言とか素直に受け止めて、改善していったとのこと。
そんな取り組みのおかげで、たくさんの人から愛されるお酒を造り続けているそうです。

日本酒玄人と素人では好みの味わいが変わる。
というか、造り手は飽きてくるから、一ひねりしたものを作りたくなる。
でも、重要なのは飲む人が「美味しい!」って思うかどうか。

酸度1.6だと尖り過ぎていたから酸度1.4に合わせていったんだってさ。

※ノートが間違えてるかもしれない、、

日本酒にもトレンド

日本酒にもトレンドが決まっています。

今は「低アル原酒」→アルコール13%くらいで、4PPMがちょっと感じられるようなお酒。
つまり、濃いお酒は流行っていません。

どんなジャンルにも一定数ファンはいますが、その規模感の違い。
マーケティング的観点で日本酒を作っている蔵はまだまだ少数派。
新政さんとかはやっぱりそこが上手なようです。

日本酒業界の弱点

日本酒業界はやっぱりマーケティングがまだまだ弱いらしく、そこが業界を盛り上げるために必要なポイント。

中国資本はどんどん参入していて、世界で「売れる」日本酒を確保しているみたいです。
プレミアが尽くようなウイスキーを中国が牛耳っているように、日本酒も中国に乗っ取られてしまうのでしょうか。
嫌だなぁ・・・

中華系の人はやっぱり商売のセンスがあるようですね。

日本酒を見るときに必要なこと

日本酒に限ったことじゃないけれど、どの産業もイメージで成り立っている部分が強いです。
だからこそ、日本酒を正しく知るためには固定観念(バイアス)を排除することが必要。

バイアスを排除すること

日本酒っていろんな迷信というか、勘違いが多いよね、
っていう話です。

雄町ブランド

雄町って、甘旨でフルーティ、みたいなイメージがあるけれど、
それって米の影響じゃなくて、そういう味に仕上げているよねっていう話。

たしかに、京都の「御前酒」さんとかって、全量雄町ですがクラシックな味わいです。

要は造り方の問題。
ひとつのブランディング戦略ですね!

テロワール戦略

テロワールって聞くと、それだけで統一感があってコンセプトが明確だけど、
それって味わいとは関係ないよね、っていう話。

テロワールだから美味しいってことはないですし、先入観抜きに日本酒を分析する冷静さが必要なんです。

山田錦の時代の終焉

山田錦は心白が大きくて、粒が大きいから造りやすいけど、山田錦以外にもいいお米は全国にあるからそこに固執しないようにねっていう話。

よくある勘違いですが、山田錦って高級で美味しいお米、というわけではありません。
あくまで「加工しやすさ」が昔からずば抜けているから、鑑評会で出品するお酒に良く使われます。

余談ですが、鑑評会って美味しいお酒を選ぶ会ではなく、基準に沿ったお酒を造れるか技術を競う会なんです。

特A地区

これも一緒で、兵庫県の特A地区というのは農家さんを守るためのブランド。
もちろん必要な概念だが、そういうお酒って、とにかくお米を削って高級酒路線になるから、面白味は少ないよねっていう話。

削れば削るほど美味しい、っていうのは迷信でタンパク質と脂質を極限まで失くすことにフォーカスしているから、出来上がるお酒は似たり寄ったりです。

もちろん、美味しいことは間違いないのですが・・・。

お酒の7割は醸造技術

作り方とか、お米の種類とか、産地とかで消費者は判断しがちですが、
お酒の評価はあくまで味で決まりますよね。
そして、味で判断するなら、やっぱり「造り方」の方が大事。

味の7割は醸造技術で決まると言っても過言ではありません。

日本酒を選ぶときには、作り方とかラベルの成分で選べるようになるといいですね。

かい入れの意味

ちなみに「かい入れ」って日本酒造りのシンボルみたいなイメージですが、実は「やらない」蔵も多いみたいです。
秋田の雪の茅舎さんとかもかい入れしないことで有名ですね。

かい入れするかしないかは、ざっくりいうと以下の感じになります。

混ぜる→発酵が促進する→パワフルな酒質
混ぜない→発酵がゆっくりに→おとなしく綺麗な酒質

一回かい入れするだけで最終的な出来が大きく変わることもあるので、回数を厳密に管理している蔵も多いようです。

香り、味を細分化する

さて、実践編です。
この学校のいいところは、理屈で終わらないところ。

お酒は味わってなんぼです。

さすが、日本酒を科学する学校。テイスティング学習も本格的ですよ。香りの成分や、味わいの成分をサンプルを用いて細分化していきます。

香りの成分

ざっくりいうと、日本酒の香りは以下の成分で構成されています。サンプルで書いた16種類。

エタノールアルコールの基本、清涼感のある香り
イソ・ブタノールオイリーで絵具みたいな香り
イソ・ペンタノール油性マジックの香り
ヘキサノールオイリーでちょっとバラの香り
アセトアルデヒド青っぽい香り(生酒に多い)
カプロン酸エチルリンゴ、ちょっとミルクっぽい香り
酢酸イソアミルバナナや洋ナシの香り
酢酸エチル除光液やセメダインの香り
乳酸ヨーグルトっぽい酸の香り
アルデヒド香ばしさと青っぽさが混じった香り(生老)
リノール酸ろうそくっぽいオイリーな香り
ソロトンカラメルや黒砂糖っぽい香り
ジアセチルバターやチーズっぽい香り
アセトインバターやチーズっぽい香り
イソ吉草酸足の裏が蒸れたような香り
カプロン酸雑巾っぽい香り

なかなか表現しにくい香りのものから、オエッとくる強烈なものまでそれぞれ。

※すべての日本酒にこれらすべてが入っているわけではありません。

味わいの成分

エタノール甘味・苦味・刺激
グルコース(ブドウ糖)甘味
アラニン甘味・苦味・旨味
アルギニン苦味
乳酸水溶液丸みのある酸味
リンゴ酸水溶液シャープな酸味
コハク酸水溶液酸味・塩味・苦味
グリセリン甘味・弱い苦味
ソトロン苦味

これらの濃淡バランスによって味が決まってきます。

※すべての日本酒にこれらすべてが入っているわけではありません。

テイスティング、いざ実践!

テイスティングは推理小説みたいな感じです。
ひとつひとつのヒントから答えに向かっていきます。

ちなみに僕たちの場合は先生の回答が無いとゴールにたどり着けません。笑

①見た目→②香り→③味わい
の順番で観察していきます!

この記事では先に名前が出ていますが、テイスティングの際には何を飲んでいるか知らされていません。

長崎県 福田 幸

①見た目

色:淡いグリーン→フラビン、メラノイジン→若めのお酒?
泡:あり→生or瓶火入れ?

ふむふむ、若いお酒かな?

②香り
  • フルーティ→吟醸?
  • シロップっぽい甘やかな香り
  • 青っぽさあり=アセトアルデヒド
  • さわやかな酸っぱい香り
  • オイリーな感じがしない

おぉ、流行りの無濾過生原酒かな?

③味わい
  • 甘味:大
  • 旨味:中
  • 滑らかさ:中
  • 酸味:中~大
  • 苦味:大
  • 収斂感:中
  • アルコール刺激:中

味は濃いけど、酸味があるからアフタースッキリ!軽くて雑味が少ない。

結果

アルコール:16% →しっかり味がある
精米歩合:45% →旨味少ない
日本酒度:-2
酸度:1.5 →アフターのキレを生むほどよさ
アミノ酸度:0.9 →綺麗な酒質
酵母:14号 →カプロン酸エチル:酢酸イソアミル=2:8

うん!美味しい!
脂が乗ったブリのカマ焼きとか合うだろうな。

高知 亀泉

①見た目

色:淡いグリーン→フラビン、メラノイジン→若めのお酒?
イエロー→グルコースが高い?
泡:あり→生or瓶火入れ?

ふむふむ、若いお酒かな?

②香り
  • 凄くフルーティ→カプロン酸エチルが強い
  • カプロン酸エチル:酢酸イソアミル=9:1
  • シロップっぽい甘やかな香り
  • さわやかな酸っぱい香り
  • 微妙にアセトアルデヒドを感じるが甘い香りでマスキング
  • アルコール感が弱い

この時点で先生からの質問!

酵母は何でしょう?

「はい!9号酵母です」

「違います」

「はい!18号酵母です」

「違います」

「はい!M310です」

「違います」

「はい!CEL24です」

「正解!」

そんなやりとりがありました。飲まずして、酵母を当てさせるなんて、、

③味わい
  • 甘味:大
  • 旨味:中
  • 滑らかさ:大
  • 酸味:中
  • 苦味:小
  • 収斂感:小
  • アルコール刺激:小

甘いけど、サラっと。グルコースが高いから、他の味はマスキングされています。

結果

アルコール:14% →CEL24の特徴
精米歩合:50% →旨味少ない
日本酒度:-13 →カプロン酸エチルとグルコースはセット
酸度:1.8 →甘ダレしないように酸で切る
アミノ酸度:0.9 →甘酸っぱい酒質
酵母:CEL24 →カプロン酸エチル:酢酸イソアミル=9:1

びっくりする果実感!初めて飲んだ時の衝撃は忘れられないなぁ。

まだ飲んだことがない方は、飲んでおいた方が良いと思います。初心者女子がハマるきっかけとしてよく亀泉さんの名前が出ますね。

新潟 八海山 

①見た目

色:無色透明→炭ろ過?
泡:なし→若くはないだろう

ふむふむ、加水のサラっと系かな?

②香り
  • アルコール
  • 高級アルコール
  • 乳酸
  • 甘やか

なるほど、ほどよい経済酒かな?

③味わい
  • 甘味:中
  • 旨味:中
  • 滑らかさ:大
  • 酸味:中 → 酸度は高くないけど、加水だから際立つ
  • 苦味:中
  • 収斂感:中
  • アルコール刺激:中

味が薄い、味の部分はエタノール由来!サラっとしてスイッと飲める。

結果

アルコール:15.5% →エタノールの甘味
精米歩合:55% 
日本酒度:+4
酸度:1.0 →酸度をぎりぎりまで下げて甘味を感じさせる
アミノ酸度:1.2 →綺麗な酒質
酵母:K701 

うん!名脇役!

お料理なんにでも合うし、お値段もお手頃。
そして、大量の加水をしているだろうから、ホントに八海山さんは経営も上手いと思います。
瓶の中身はけっこうな割合で水でしょうね。

こう表現すると、「加水=悪い」みたいな捉え方をするかもしれませんが、
加水は全く悪い事じゃありません。
水を加えることによって、最適な酒質に持っていっているのです。
濃ければ美味しいとも限りません。
八海山はホントに上手。

石川 天狗舞 

①見た目

色:イエロー、ブラウン→メラノイジン(メイラード)→熟成orアミノ酸
泡:微量→瓶貯蔵?若い?

ふむふむ、アミノ酸が高いのかな?

②香り
  • 飴っぽい香り:アミノ酸
  • 穀物っぽい香り

おぉ、なんだろう?

③味わい
  • 甘味:大
  • 旨味:大
  • 滑らかさ:大
  • 酸味:中~大
  • 苦味:中~大
  • 収斂感:小
  • アルコール刺激:小

味が濃くて、なんだか尖っている!

結果

アルコール:15% →尖っているからも
精米歩合:60% →旨味とオイリーさ
日本酒度:+2
酸度:1.6 →もっと低く感じる(アミノ酸にマスキングされる)
アミノ酸度:1.4 →甘・旨・苦
酵母:自社

うん!甘旨!
若い今も美味しいし、熟成させておいても美味しくなるんだろうな。
老麹を使って、アミノ酸を出してきてますね。
老麹ってそのまま食べても甘いんです。

まとめ

日本酒って知れば知るほど奥が深くなります。楽しいですね!

味を正確に把握できるようになると、造り方が一発で見えてくるらしいです。
香りだけで精米歩合を予想したり、味わいでアルコール度数、酸度、アミノ酸度などが予想はできるようになってきたのも嬉しいこと。

学びと実践の繰り返しで、正確なテイスティングを身につけられるとのことなので、日々練習です。
単純に、香りだけで「これはこういうお酒ですね」って言えたらかっこいいなぁと思って練習しています。

あなたも、バイアスを取り払って、お酒と向き合ってみると新たな発見があるはずです。
そんな楽しみ方をする変態な仲間が増えたら嬉しいです。

今日も素敵な日本酒ライフをお送りください!

(記事:夫のサニー)

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