日本酒好きのあなたなら「米違い」という言葉を耳にしたことはないだろうか?
今回は酒米の中でも人気の高い「雄町」についてのお話。そして、「米違い」に関する誤解を解消したいと思っている。
日本酒ファンを魅了する雄町
「あぁ、旨い!やっぱり雄町って甘くてジューシー。これぞ雄町!」
こんなコメントをする日本酒好きのおっちゃんを見かけたことはないだろうか?
雄町を使った日本酒と聞くと、甘くフルーティな香り(吟醸香)がして、初心者も飲みやすい商品が多いイメージがある。
ただ、その理由を「雄町だから」と説明してしまうのは乱暴である。
美味い酒を飲みながら、うんちくを語りたくなる気持ちは分かる。
私も酒の席ではべらべらと喋ってしまうタチだ。
”通”っぽさが出るし、好きなものを知ることは楽しい。それを周りの人にも教えてあげたくなる。
しかし、どうして、日本酒に関するウンチクって誤解が多いのだろう?
雄町=甘くて美味い酒??
ちなみに、さけ夫婦はちょっと前まで、
「雄町=甘くて美味い酒」だと思っていた。
雄町が米の品種名ということすら知らなかった(笑)
米違いという言葉を知ってからは、山田錦はこう、五百万石はこう、美山錦はこう、みたいに米ごとに味が変わるんだと信じていた。
でも、結論から言うと、
雄町から作った日本酒が甘くてフルーティな酒になるとは限らない。
そりゃそうだ。と、
すでにご存じのあなたはこれ以降の文章を読んでも時間の無駄かもしれない。
そもそも雄町って何なの?
そもそも、雄町とは日本酒造りに適した米である。
これを酒造好適米と呼ぶ。
酒造好適米とは?→〇
簡単に言って、雄町は美味しい日本酒を造りやすい高級酒米である。
だが、雄町以外にも酒造好適米は全国に数百種類存在し、現在も農業試験場の方々による研究によって新品種が生まれ続けている。
その中でも雄町が、脚光を浴びたのはその歴史的背景が原因している。
実は、昭和に一度絶滅した品種なのだ。
えっ!?絶滅した米がなんで復活したの?という話しはこちらから→〇
その背景を活かして、多くの酒蔵が努力し「雄町」をブランド化した。
つまり、ブランドのコンセプトを一貫するために味が似たようなものになっている。
じゃあ、やっぱり雄町の日本酒は甘くて、フルーティなんやないかい!
という声が聴こえる気がするが、もう少しお付き合いください。
お酒の味ってどうやって決まるの?
お酒の原料は米である。そして水、麹、場合によっては醸造用アルコールが用いられる。
造りの流れについてはこちら→〇
原料米を発酵させて酒になっていくのだが、用いる米は味にどれほど影響するのだろうか?
ざっくりいうと7~8%である。
原料の種類が少ない分、米に依存する割合が大きいと思われがちだが、実際のところ味にはそれほど影響しない。
では、いったい何が酒の味を決めているのか?
ずばり”酒蔵”である。
ひいては、酒造りの責任者である杜氏(とうじ)が酒の味を決めていると言える。
もう少しかみ砕いていうと、原料よりも作り方=設計=技術が重要だということだ。
つまり、杜氏がその気になれば雄町を使って「すっきりドライ」や「豊潤でずっしり」した酒質の日本酒だって作ることができる。
米違いに惑わされないで
実際に雄町を使ったお酒で、「雄町っぽくない」酒も無数にある。
では、米の種類以外に何に注目すべきなのか?
酒の味を決める要因として、ざっくり以下が挙げられる。
などなど、これらひとつひとつがお酒の味に大きく影響する。(多いですよね。。)
例えば、
「雄町の精米歩合80%、9号酵母、アル添熟成酒」
「美山錦の精米歩合60%、M310号酵母、無濾過生原酒」
であれば、絶対に後者の方が雄町っぽいはずだ。
「オマチスト」の幻想
上記を読んでお気づきの通り、米の種類が酒質に占める割合は意外と低いことをご理解いただけたと思う。
現段階で腑に落ちていないとしても、日本酒造りについて徐々に知っていくと納得いただける日が来るだろう。
さけ夫婦が日本酒を知り始めた頃は、雄町の日本酒を愛する「オマチスト」だった。
だから、日本酒バーに行くたびに「雄町のください」と注文していたけれど、今思えば、想像した味じゃないことも多かった。
「甘酸っぱくて、味が乘ったジューシーなお酒」は雄町じゃなくてもたくさんあるし、雄町がそうとも限らない。
雄町は非常に魅力的なエピソードを持っている米なので、話の肴にはもってこいだ。
初心者の切り口には分かりやすくてよいと思う。
だが、すでに日本酒について知識を持ち始めているあなたには「雄町だから~~な味」という強引な因果関係を断ち切ってみてほしい。
米=エサ という認識
まとめになるが、米の違いが日本酒の味の違いに直結するわけではないということを伝えた。
日本酒の味に関わる要因について挙げたが、一気にすべて覚えることは難しい。
では、何を中心に捉えるべきか?
すばり”酵母”である。
酵母が日本酒のアルコールも甘味、旨味、酸味、苦味、を生み出している。
つまり、米はあくまでエサである。
厳密には麹も絡む話なのでここでは割愛するが、
米は酵母のエサ、杜氏は酵母に気持ちよく働いてもらうために全力で環境を整えている。
という風に覚えていてほしい。
つまり、雄町も良質なエサのひとつ、ということだ。
酵母を中心に日本酒を学んでいくと、もっと深い魅力にどっぷりハマるだろう。
この記事を読んだあなたと日本酒を飲みかわす日が来ることがさけ夫婦の夢です。
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